自動車工学基礎シリーズ 第7回 モード燃費

目次

はじめに

自動車開発において絶対に避けて通れないのが「排ガス性能」と「燃費性能」です。
どちらにも厳しい規制があり、これらの性能目処付の後に、「動力」「ドラビリ」開発になるのが通常です。
今回は、「燃費性能」について解説します。

カタログ燃費とは?

日本ではこれまでに、以下の「走行モード」をつかってカタログ燃費が決定されてきました。

モード名概要特徴
10・15モード昔の市街地を模したパターン停止や発進が少なく、実際の走行とはズレが大きい
JC08モード発進・加減速を含む日本独自のパターン現実の燃費よりやや高く出やすい
WLTCモード市街地・郊外・高速の3パターンを含む世界統一方式より現実に近い方式

モード燃費とは?

モード燃費とは、「規定の走行モード」でクルマを試験的に走らせたときの燃費です。

この走行パターンは、速度や加減速、停止・再発進などを含んでおり、標準化された方法で全車が同じ条件で測定されます。ちなみにですが、大半のモードでエアコンはOFFです。

WLTCモード

LA4(アメリカのモード)

各車両の燃費

国土交通省がメーカー毎の燃費を公表しています。参考にどうぞ

燃料消費率マップとの関係

モード燃費の本質を理解する為には前回説明した燃料消費率の考え方を理解しておく必要があります。

モード走行では規定の車速や加速度、走行抵抗が決まっています。
つまり、モード走行を走るための必要な出力は計算できます

つまり、カーメーカーはモード走行に必要な出力を可能化限り最小燃料で出すセッティングをします。
少なくともエンジンが非効率な領域は絶対に使わない設定にするのは言うまでもありません。

狙ったセッティングをすると言っても、WLTCに代表される昨今のモードはかなり幅広い出力を必要とします。
そのため、以前は高効率の領域を使い続けられるCVTが有利でしたが、昨今は多段ATでも差はありません。
むしろ高車速域で効率を落とす傾向※のあるCVTの方が不利になってきています。

※CVTでハイギヤ比を使うためには、高い油圧が必要となる場合が多い。高い油圧を作るためのエネルギーロスや高圧をかけながらの変速するという非効率な状態になるため、高車速域で効率が悪い

まとめ

燃費性能は自動車開発において最重要性能です。
自動車開発における燃費とは各国で決められた「モード燃費 ≒ 実用燃費」を示します。

モード燃費と実用燃費に乖離があるのは必然、という説明をしてきましたが、実は、あまりにも乖離が大きすぎると罰則があります。自動車メーカーも実際の燃費が良くなければクレームの嵐となるため、意図的に乖離させるようなことはしませんのでご安心ください。

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