はじめに
データ分析やAIの話になると、つい「どの手法を使うか」「どのモデルが精度が高いか」に目が行きます。
でも『データドリブン思考』を読むと、ビジネスで成果を出すために本当に大切なのはそこではない、と気づかされます。本書が繰り返し示しているのは、次の2点です。
- 課題を形成できるか(何を解くべきかを作れるか)
- 意思決定の手がかりになっている暗黙知・感覚を形式知にできるか(決め方を言葉と構造にできるか)
この2つができて、初めてデータ分析は「使える武器」になります。

成果や問題は「決定」と「行動」のあとに生まれる
売上が伸びた、失注した、品質が落ちた、顧客満足が下がった。こうした結果は、突然起きるものではありません。
- 何かを決める
- それに沿って動く
- その結果として、成果や問題が生まれる
だから振り返りの焦点は「結果」だけでは足りません。
本書が促すのは、さらに根っこの “決め方” に戻ることです。
まず必要なのは「課題形成する力」
データ分析までの流れを一言で表すと、分析は最後です。
「分析から入らない」という姿勢が、実務では効きます。
なぜなら、データ分析が“意思決定の改善”に直結するルートが、この順番の中に最初から用意されているからです。
意思決定プロセス課題まで落とすと、分析が迷子にならない
課題形成の中でも特に重要なのが 意思決定プロセス課題 です。
ここが曖昧なままデータに触ると、分析が「できること探し」になってしまいます。それをやってしまうと分析結果が意思決定に採用されることがなく、だれにも貢献していないデータ分析になってしまいます。
意思決定プロセス課題は、次の形まで落とせると強いです。
「(選択肢)の中から、(目的に合う)ものを選ぶプロセスに関する、(判断/手がかり)の課題」
例(イメージ)
- 「複数の施策案の中で、最も利益に効く案を選ぶプロセスに関する、効果見込みの見積り精度の課題」
- 「複数の不具合対策の中で、再発防止に効く案を選ぶプロセスに関する、原因の切り分け手がかり不足の課題」
この形で書けると、次にやる分析(仮説、仮定、予測)が自然に決まります。
「手がかり」は暗黙知や感覚でできている
意思決定を分解すると、
- 選択肢を出す
- 手がかり(判断材料)を付ける
- 決める
という流れになります。データ分析が最も貢献できるのは、この 手がかり の部分です。
ところが現実には、手がかりは数値やルールではなく、
- ベテランの経験
- なんとなくの違和感
- 説明しづらい判断基準
- 言葉になっていない「コツ」
といった 暗黙知・感覚 で動いていることが多いです。
ここが言語化されていないと、分析する側は「何を指標にすればいいですか?」から先に進めません。
結果として、分析テーマがブレる、結論が現場に刺さらない、という事態が起きます。
だから重要なのが「暗黙知や感覚を形式知にする」こと
ここが本書の一番実務的な示唆だと感じました。
暗黙知や感覚を形式知にする、というのは「ベテランの勘を否定する」という話ではありません。
むしろ逆で、ベテランの勘を 誰でも再現できる形 に近づけることです。
- 判断の観点を言葉にする
- 何を見て、何と比べて、どう判断しているかを構造化する
- 判断材料を共有できる形にする
形式知化が進むと、初めて「どの手がかりをデータで補強すればよいか」「どこを予測すればよいか」が決まっていきます。
データ分析は、いきなり万能薬として登場するのではなく、形式知化された意思決定プロセスの弱点を補強する役割として立ち上がる、というイメージです。
形式知が無いなら、比較で“引き出す”ところから始める
「その判断基準、言葉にできますか?」と聞いても出てこないことはあります。暗黙知にすらなっていない感覚もあるからです。そのときに効くのが 比較という手段です。
- 良いケースと悪いケースを並べる
- 成功した例と失敗した例を並べる
- 上手い人と初心者を並べる
比較すると、人は違いを勝手に説明し始めます。その説明が、形式知化の材料になります。
分析は“答えを出す作業”というより、気づきを生む装置として機能する。
この発想があると、データ分析は現場に寄り添う形になります。
まとめ
『データドリブン思考』を読んで整理されたのは、成功する順番でした。
- 問題を書く
- 課題を書く
- 意思決定プロセス課題を書く(決め方のどこを直すか)
- その中核である「手がかり」が暗黙知・感覚なら、まず形式知にする
- 形式知化できた部分から、仮説・仮定・予測として分析テーマを定める
ビジネスで成果を出すデータ分析とは、データで意思決定を置き換えることではなく、意思決定を強くすること。
そのために最も大切なのが、課題形成する力と、暗黙知や感覚を形式知にする力。
この2つを中心に据えた本だと感じました。

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